二酸化塩素とは

二酸化塩素(ClO₂)は、塩素に似た構造をもつ酸化剤であり、幅広い微生物に対して高い除菌力を発揮します。その特徴は、バイオフィルムに対する高い浸透性と、広いpH領域における優れた除菌効果にあります。通常の塩素消毒では、バイオフィルムによって保護された微生物に十分な除菌効果を期待することはできませんが、二酸化塩素はバイオフィルムに浸透し、これを破壊することで内部の微生物を効果的に除菌することが可能です。また、アルカリ性の水質においても除菌効果がほとんど低下しないため、温泉水や冷却塔水におけるレジオネラ対策にも有効な除菌剤です。
一般的性質
化学名 | 二酸化塩素(Chlorine Dioxide) |
化学式 | ClO₂ |
分子量 | 67.45 |
物理的状態 | 赤色~黄色の気体 |
臭い | 塩素に似た刺激臭 |
溶解度 | 0.8g/100mL(20℃) |
蒸気圧 | 101kPa(20℃) |
二酸化塩素の特長
- 強力な酸化力と除菌力を有し、塩素と比べて有機物の影響を受けにくい。
- 細菌・真菌・芽胞・ウイルス・原虫など、幅広い微生物に有効。
- pH4~10の広い範囲で除菌力が低下しない。
- バイオフィルムに保護された微生物にも浸透し、効果を発揮。
- トリハロメタンなどの発ガン性物質をほとんど発生しない。
二酸化塩素の生成方式
2液式
従来、二酸化塩素の生成方法として一般に用いられてきたのが「2液式」です。この方式は、 亜塩素酸塩溶液 と 酸性溶液(主に塩酸) の2種類の液体を混合し、化学反応を起こすことで二酸化塩素ガスを発生させます。
反応式
5NaClO2 + 4HCl → 4ClO2 + 5NaCl + 2H2O
■メリット
- 二酸化塩素を大量消費する用途において、コストを抑えることができる。
■デメリット
- 強酸性の危険な薬品を扱う必要がある。
- 高濃度の二酸化塩素ガスが急激に発生するため、取り扱いに危険を伴う。
- 混合比率を誤ると反応効率が低下し副生物が発生する。
- 使用直前の調製が必須で、取り扱いに手間がかかる。
- 長期保存や持ち運びには不向き。
錠剤式
二酸化塩素生成に必要な薬剤をあらかじめ混合・成形した錠剤で、水に投入するだけで簡単かつ安定的に二酸化塩素を生成します。
■メリット
- 危険な薬品を直接扱う必要がない。
- 水に入れるだけで簡単に所定濃度が得られる。
- 発生量が一定で、濃度管理がしやすい。
- 錠剤は長期保存が可能で、保管や輸送が容易。
- 必要な分だけをその場で調製できる。
■デメリット
- 2液式に比べてコストが高い。
世界での利用状況
分野 | 主な地域・国 | 概要 |
---|---|---|
水道 | 米国、EU、オーストラリア、日本など | 水道水の消毒剤として広く使用。WHO・EPAなどが安全基準を設定。 |
食品 | 米国、EU、一部アジア諸国 | 食品加工施設や食品の殺菌に利用。EUでは食品添加物としては未認可。 |
工業 | 世界各国 | 紙パルプ漂白や工場排水処理などに使用。 |
医療 | 米国、EU、日本など | 内視鏡消毒剤、アイソレータの除染剤などに利用。医薬品としては未認可。 |